個々の専門性を高めて弱者を守る

IT技術と法律事務所の専門知識を融合させて、架空請求の撃退アプリという形に見事に結実させた弁護士法人モッキンバード法律事務所の川目武彦先生に、アプリ開発の経緯を中心にお話をうかがいました。
事務所の特徴、力を入れている取組みを教えてください。
一貫性がないのが、当事務所の特徴です(笑)。 一つの分野に集中して取り組むやり方もあると思いますが、私は、所属する個々の弁護士やスタッフのスペシャリティを高めながら、必要に応じてこれを連携させる事務所形態の方が好ましいと考えています。 当事務所は群馬県に大泉支部を持ってますが、この地域は全国でも特に外国人の割合が高く、お客様の半分くらいがブラジルの方という支部であるため、ブラジル人の通訳をスタッフとして常駐させて対応しています。
事務所のモットー、大切にされていることは何ですか。
少数の弱者、そうした人たちを守る。ありきたりですが、弁護士として、この役割をいつも意識しています。
ところで、架空請求を見破る撃退アプリを開発されたという新聞報道を見ました。開発に至った経緯を教えてください。
はい。まずアプリの名称は、「Scam Detector(スカム ディテクター)」といいます。私とプログラマーの大久保康平さんと二人で共同開発しました。 私は、ITやクラウド技術を使って弁護士業務をもっと効率的にできないかと考えて、これまでいろいろなアイデアを温めてきたのですが、米国留学の機会に知り合ったITコンサルタントの方とビジネスモデルを考えていく中で、架空請求撃退アプリの構想がまとまりました。
なぜ、架空請求のアプリだったのですか。もう少し詳しく教えてください。
日頃、架空請求の相談を多く受けているのですが、専門知識があれば比較的容易に見破ることができる架空請求の文面でも、これを一般の方が目にしたときはとても不安になるでしょうし、場合によっては、実際に騙される方も出てきてしまう。 こうした実情に対して、AIが有効な打開策になるのではないかと考えました。 以前、人工知能の勉強をした際、AIは画像判断が得意だということが分かっていましたから、さまざまな架空請求書を集めて、その特徴をAIに教え込ませることで、撃退アプリを実現することができました。
アプリの精度はどのレベルなのでしょうか。
今の段階では典型的な架空請求ばかりですので、容易に判定できていますが、今後は架空請求業者もこれに対応して、文言等を変えたり、まだAIに教えていない部分で表現を変えてきたりすることが予想されます。 ただ、一回それが来れば、その瞬間にそのワードはAIに入りますから、次からは全部はじかれることになります。 こうしてデータを蓄積していけば、将来的には、アプリの方が人間よりも高い精度で判定できる可能性もあると思います。
最後に今後の展望をお聞かせください。
リーガルテックと法律事務所のノウハウを活用した新しい価値を生み出して、我々の業界を変えるようなサービスを提供していきたいと考えています。