世代を超えて長く会社が続いてほしい
田中先生は、税理士法人の共同経営者として相続税申告等の業務を行う一方で、事業承継コンサルティングを行う株式会社をお一人で経営し、あまり他の事務所では行われていない、後継者に会社を上手くバトンタッチするための支援を行われています。今回は、そんな親子間の事業承継支援専門家としての田中先生の、これまでとこれからをお伺いしました。
先生が税理士になられたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか
もともと法学部出身で、「資格で食べていきたい」と漠然と思っていたのですが、数学が好きだったこともあり、また、当時の新聞で国税庁が国際税務に力を入れているというコラムを見たことから、国税庁に入って経験を積み、その後、国際関係に強い税理士になりたいとあこがれたのがきっかけです。 そのため、大学卒業後の最初の就職は国税専門官でした。そこでは結局、個人課税を担当することになったのですが、4年の経験を積んで税理士になろうと決意し、試験に合格し、大手監査法人系税理士事務所の資産税に関わる部門に配属されました。
監査法人系税理士事務所の資産税関係の部門というと、どのような業務をされていたのでしょうか
大きな事務所だったので、中小企業以外にも上場企業や上場企業の子会社などといった顧客に対し、M&Aや組織再編、事業承継等の支援をしていました。
そこから、税理士として独立されたのにはどのような経緯があったのでしょうか
実は、当初は、監査法人グループで最後まで勤め上げるつもりでした。しかし、まずエンロン事件の影響を受けて、所属していた部門が分社化されたのですが、その後、リーマンショックの影響でその会社が解散してしまったのです。 それからは、他の会計事務所に勤務して法人顧問業務や相続部門の強化などを経験しながら、自分はこれからどのような道に進みたいのかを模索しました。 最終的に、事業承継を支援したいという気持ちが固まり、独立に舵を切りました。
事務所設立後、さらに事業承継コンサルティングを行う株式会社を設立されたということですが、どのような理由からでしょうか。
税理士として事業継承対策を進めるなか、他の税理士法人に事業承継部門として参画する機会があり、合流させてもらいました。それが現在の業務の1本の柱にはなっているのですが、他方で、通常の税理士法人や会計事務所では行わない、申告業務や節税提案等以外の部分での事業承継のサポートがしたいという想いがありました。それを行うために、株式会社を設立したのです。 その、私が行いたかったサポートというのは、先代から後継者へ上手く経営を引き継げるようにするための支援です。 私自身が、会社の解散というものを間近で経験したことで、企業には、社会に求められる限りできるだけ長く続いてほしいという想いが大きくなっていました。そのため、経営が上手く引き継げないで企業がなくなってしまうことは防ぐ必要があると考え、企業が世代を超えて継続していけるように、支援したいと思ったのです。
具体的には、どのような支援を行われているのでしょうか
これは当然かもしれませんが、後継者となる方の傾向として、会社規模で財務を動かした経験がないなど、会社を経営するための準備が整っていない方が多いというものがあります。 そのため、管理会計やキャッシュ・フロー的な目線から、後継者が計数に基づいた経営をやりやすくするには、先代と後継者がどのような準備をすればいいのかを実践するお手伝いをさせていただいています。 承継のタイミングなども、株価という視点だけでなく、利益体質をきちんと作ってから引き継げるように支援していくといったイメージです。 言葉にすると簡単なようですが、非常に難しく、やりがいのある仕事です。
事業承継支援のお仕事の、今後の展望をお聞かせください。
事業承継で難しいことのひとつがヒト・組織の承継です。事業承継を行う上で、従業員との関係をどのように円滑に進めていくかは難しく、私一人では限界があるので、他の専門家とのネットワークを広げて、よりよいサービスを提供していけたらと思っています。 そして、良質なサービスを多くの会社に提供できるよう、今は私一人の会社ですが、ゆくゆくは従業員を雇って大きくしていきたいと思っています。
最後にレガシィの商品はどのようにご利用されているか教えてください。
主に、私自身の知識のアップデートのために活用しています。また、共同経営者となっている税理士法人のスタッフの所内研修に活用させていただくこともあります。