データのトレーサビリティを調査します

TMI プライバシー&セキュリティコンサルティング 株式会社  代表取締役
大井 哲也 氏
 取締役
寺門 峻佑 氏
 取締役
戸田 謙太郎 氏
 取締役
和藤 誠治 氏
東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 23 階

TMI総合法律事務所に所属する弁護士らが起業し、TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式会社が設立されました。代表取締役の大井氏を中心にメンバーの方々に、事業内容や今後注力していきたいことをお聞きしました。

TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式会社の設立目的を教えてください。

大井氏

新会社の設立以前から、TMI総合法律事務所ではデータ利活用における個人情報保護法対応、GDPRその他各国法に基づくセキュリティ体制の整備を行っていましたが、あくまでリーガルサービスのみでした。しかし、クライアントである企業のニーズは、リーガルサービスにとどまりません。例えば、現在は小売店のPOSデータと(小売店が運営している)ECサイトの購買・閲覧履歴データを連携させることができます。しかし、どのような技術を使って、データ間の連携を行うか。といった問題を解決するには、リーガルだけではなくデータ利活用の技術的なノウハウも必要になってきます。こうしたリーガルだけでなく技術的なサポートもワンストップで提供できる体制を作りたい、ということが今回の会社設立の目的となります。新会社では、データの利活用支援、データセキュリティ構築とインシデント対応、この2つの事業が柱となります。

法律事務所が会社を設立するのは珍しいですね。

大井氏

そうですね。事務所内で行われた新規事業コンテストで選ばれたのが会社設立の経緯です。ただ、以前からセキュリティ関連のコンサルティング会社を設立したいと頭の中では考えていて、たまたまタイミングが一致しました。

2019年12月に新会社が設立されてから、どのような仕事の依頼が多いですか?

大井氏

今は、リクナビ事件の教訓から、「外部からデータの提供を受けていいのか」というご相談が多いですね。食品に例えると、トレーサビリティの問題です。データを直接収集する事業者(主にWEBメディア・アプリ会社)と、データを買い集める事業者(データアグリゲーター)がいます。さらに、データアグリゲーターは広告に使用したい事業者に再販売します。その際、WEBメディア・アプリ会社が適法に個人情報を取得して、売る権限を持っているかを調べる必要が出てきます。このようなニーズに応えるため、弊社ではデータのトレーサビリティを調査するサービス(データ・デューデリジェンス サービス)を行っています。

データの売買市場は大きくなっていますか?

大井氏

結構大きくなってきています。検索エンジン、広告代理店、ECプラットフォーマー。あらゆるプレーヤーが進出し、データの売買市場を形成しています。

今後、注力していきたいことを教えてください。

大井氏

専門領域を絞り込んだ上で、コンサルティング会社として、より高度で実務に近いアドバイスをしていきたいです。DX(デジタルトランスフォーメーション)といえば、TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングと、パッと思い浮かぶような会社にしていきたいと思います。それから、法律事務所にも当てはまりますが、法律カットではなく産業カット、つまり産業でコンサルしていくという流れがこれから必ず来ます。「個人情報保護法対応」ではなくて「データ活用にまつわるサービス」は全てやります、といった切り口でコンサルしていきたいですね。

寺門氏

会社がデータを誰から受け取って、どこで管理して、誰に渡しているか。実は業界ごとに全然違います。業界によってデータの取り扱い方が違うので、どの部分に個人情報保護法の問題があるかも違ってきます。法律を分かっていても、事業自体を理解していないとアドバイスができないのです。

最後に、先生方のように弁護士資格を持ちながら起業を考える方へアドバイスを。

寺門氏

新会社設立後は、無駄な時間がなくなりました。若手弁護士の場合、ドキュメント作成やパートナー弁護士への説明などの仕事が終わり、ふと一息をつく時間があるかと思います。その間に何か考えればいい。やりたいことがあるならば、自分の仕事の傍ら常に考えていればいいのです。

和藤氏

会社は法務にとどまらず、人事労務・経理・営業と色々なことに配慮しなければ上手くいきません。大変である反面、一つ一つが重要な経験になります。志のある方はやってみたら、というのが私の考えですね。結果として本業に戻るとしても、その経験が活きてくると思います。