遺留分制度を潜脱する部分が無効とされる

遺留分制度を潜脱する部分が無効とされる

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信託での対策が無効となる危険性があるケース

 信託を利用した相続スキームのうち、後継ぎ遺贈型受益者連続型信託を用いた相続対策で、遺留分制度を潜脱する部分を無効とする判決が下された(東京地裁平成30年9月12日判決)。
 父の生前に、父のすべての不動産に対し、受託者である二男に4/6、長男、二女に1/6ずつの受益権を設定した信託契約がなされた。形式的には遺留分相当の受益権が付与されたことになるが、長男は遺留分を侵害されたと主張。
 長男の訴えに対し、東京地裁は、経済的利益の分配が想定されない父の居宅やその他不動産を信託財産とした部分について、遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したもので無効であると判断した。ただし、長男が経済的利益を享受できる賃貸物件等を信託財産とした部分については有効と判断した。
 信託を使い、財産の所有権と受益権を分離し、受益権のみを遺留分に相当する部分だけわたすという相続対策スキームは、従来より民事信託の活用法の一つとして紹介されることもあった方法である。
 今回の判決で、契約内容によっては、対策が無効となるリスクが呈されたので、注意が必要である。