ビジネス週刊誌も特集し始めた「生前贈与」が使えない!?

ビジネス週刊誌も特集し始めた「生前贈与」が使えない!?

レガシィ編集部員が見聞きした、司法書士・司法書士事務所にまつわるニュースをお知らせしていくのが「司法書士業界ニュース」。新しい法制度の話題はもちろんのこと、業界に関連する社会・経営・経済の話題や、講師の先生からお聞きした話など、さまざまなニュースをお届けしていく予定です。

暦年贈与がなくなる!?

 ビジネス週刊誌でも取り上げられ、注目を集めている「暦年贈与がなくなる!?」とは、どういうことなのでしょうか? 実はその発端は、令和2年(2020年)12月10日に発表された、『令和3年度税制改正大綱』にあります。その中に記された「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」。それは、ズバリ言えば相続税・贈与税の改正の予兆なのです。
 今まで、富裕層の相続税対策としては「暦年贈与」が勧められてきました。暦年贈与では、贈与時に贈与税を課税されても、相続税の税率より安いケースも多いので、早めに財産移転するとお得となるからです。現に平成30年贈与課税件数は、暦年課税分約37万件が利用されています(2020年11月13日に開かれた第4回政府税制調査会資料)。
 『令和3年度税制改正大綱』において、富裕層にとって有利な暦年課税制度に制限を加えるか、あるいは廃止する方向で検討をしている気配を読み取れることができることから、話題が盛り上がってきているのです。

 2020年11月13日に開かれた、第4回政府税制調査会の資料によれば
●個人金融資産1,700兆円のうち60歳以上が6割を所有している(2014年)
●65歳以上の高齢世帯は25%が3,000万円以上、14%が2,000万円以上3,000万円未満の貯蓄残高を所有している(2014年)
●被相続人が80歳以上の方が全体に占める割合は71%(平成30年・2018年)であり、この年齢は50代・60代以上の子供がいる
 若い世代への移転は子供世代より孫世代が対象になると経済活性化に有益である。
 高齢者が持っている金融資産を、消費に繋がる若い世代に移転すれば経済が活性化する。ただし富裕層に有利にすると相続税・贈与税の本来の趣旨である、資産の再配分機能が確保できない。そこも考慮しながら検討をする。

 この議論の方向性をもって、将来の税制改正を推測すれば2通りが考えられます。
●暦年贈与税制を廃止し、すべて贈与は相続時精算課税とする。贈与時は税金がかからず、もしくは少なくし、相続の時にすべての贈与を含めて課税する
●暦年贈与制度を見直し、相続前の贈与の加算を現状の3年前を⑤年前に、あるいは10年前、15年前にする。これによって暦年贈与の利用の制限をし、資産移転の時期を中立的にしながら資産の再配分機能を強化する

 そこで、納税者側の対応策はどうなるでしょうか? この改正、現在は検討中ですが、令和4年度税制改正には出てくる可能性が強いです。税制改正でさかのぼって課税強化することは考えにくいので、親孝行の子供と、その子供の子供である孫に、教育的配慮をしながら今から有利な暦年贈与を思い切って検討するなどが考えられます。

※下記リンクは参考商品の1つとなります。

商品はこちら