平成31年度 税制改正要望で注目の要望は?

平成31年度 税制改正要望で注目の要望は?

レガシィ編集部員が見聞きした、司法書士・司法書士事務所にまつわるニュースをお知らせしていくのが「司法書士業界ニュース」。新しい法制度の話題はもちろんのこと、業界に関連する社会・経営・経済の話題や、講師の先生からお聞きした話など、さまざまなニュースをお届けしていく予定です。

平成31年度 税制改正要望と司法書士の実務

平成27年からスタートした相続税の基礎控除等の改正から
一般の方の税金に対する意識が急激に上がった、というお声をよく聴きます。

司法書士の実務の周辺でも、税金については
避けて通れないところです。

そこで、先日発表された、各省庁からの来年の税制改正に向けた要望から、
注目項目を取り上げたいと思います。

1、「個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置の創設等」
  に関する経済産業省からの要望について。

法人についてはこれまでに事業承継税制が創設されていますが、個人事業者の事業承継については、まだ検討の余地があるとし、税制改正大綱では継続検討事案とされてきました。

現行制度で個人事業者に対しては、事業用土地に関し小規模宅地の減額特例として400㎡まで80%の評価減を行うことが出来ますが、他の事業用資産については手当がされていません。

そこで経済産業省より、「事業承継時の税負担のために事業継続に必要不可欠な事業用資産を売却しなければならない事態を防ぐための措置を講ずる必要」から、「個人事業者について、先代経営者から後継者への事業用資産の承継を円滑に進めるための措置を講ずる」との要望が出されました。

ちなみに、事業用資産として検討される可能性があるのは、経済産業省の資料より「建物」と「機械・器具備品」が中心となりそうです。

2、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除についての要件緩和」
  に関する国土交通省からの要望について。

現行制度では、相続日から3年を経過する日の年の12月31日までに、被相続人の一定の居住用家屋を相続した相続人が、その家屋を譲渡した場合に譲渡所得から3,000万円を控除する、という内容となっています。

課題として、次のようなケースでは控除対象とすることができませんでした。
・被相続人が老人ホーム等に入居していた場合
・譲渡後に家屋の除去又は耐震リフォームを行った場合

今回の要望では、これらいずれも対象に加える、としています。

さらに、この制度はもともと時限立法でしたので、平成31年12月31日までの譲渡に限られていましたが、今回の要望では、4年間の延長として「平成35年12月31日までの譲渡」、としています。

3、「相続した株式の譲渡における相続税の取り扱い」に関する
  金融庁からの要望について。

現行制度では、株式に限らず相続した不動産などの財産を相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合には、その財産に対応する相続税額を譲渡所得の計算上、取得費として収入金額から控除して税額を計算することが出来ます。

しかし、逆を言えば3年以内に売却しなければその相続税部分は全く考慮されないため、相続後の3年以内の株式売却を助長している、つまり税制が国民の資産選択を歪めている、との指摘があります。

そこで、「世代を通じた長期の株式保有を促す観点から、当該売却期間に関する3年以内の制限を撤廃するように整備する」との要望が出されました。

併せて、上場株式等の相続時の評価に係る見直しについても要望しています。

株式は景気へ影響を与えるだけでなく、年金問題の対応策として自己責任において政府がその運用を推奨している現状を考えれば、値動きのある株式に対する相続税課税を抑えることで、その運用に目を向けてほしい、との思惑もありそうです。

これらのの改正要望が年末の税制改正大綱に盛り込まれるか、注目です。

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