5月10日、改正民事執行法が成立

5月10日、改正民事執行法が成立

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子の引渡し手続の明確化と財産開示手続の拡充強化が2本柱

5月10日、離婚に伴う子の引渡しの手続の明確化などを含む「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案」が、参院本会議で全会一致により可決、成立しました。
法務省HP

本改正は、①子の引渡し手続の明確化、②債務者の財産開示手続の拡充強化の2点が大きな柱となっています。

①の子の引渡し手続の明確化については、現行では子の引渡しに関する規定がなく、動産の引渡しに関する規定が準用され、子を親権者に返さない監護親に対しては、制裁金を科す間接強制が実施されていますが、実効性に乏しいとされてきました。
本改正により、監護親が不在でも、親権を持つ引き取る側の親が立ち会えば、裁判所の執行官が強制的に子を引き渡すことができるようになります。

離婚事件に詳しい本橋美智子弁護士も、これまで子の引渡しの審判が出ても、監護親側が強く拒否するなど、徹底抵抗された場合には、引渡しが執行できないという実情がありましたが、今後は、従来より強制力が増すことから、引渡しの実効性も高まることが期待できる。また、実際に子の引渡しを確実に執行されるためには、相手側の弁護士が、他方当事者を説得するなどの協力も欠かせない、とのことです。

一方で、子の福祉の観点から、裁判所と執行官の責務として、「子の年齢及び発達の程度」などの事情を踏まえ、「子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならない」との規定が明記されることになりました。

また、国境を越えて連れ去られた子の取扱いを定めた「ハーグ条約」の国内実施法もあわせて改正され、同様の規定が整備されました。

②の債務者の財産開示手続が拡充強化については、本改正により、債権者が申し立てれば、裁判所が金融機関に命じて債務者の預貯金などの情報が取得でき、市町村や登記所などの公的機関からは土地・建物や勤務先の情報を得られるようになります。

また、財産開示義務のある債務者が、裁判所の呼出しに対して正当な理由なく出頭しない等の場合には、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになりました。

今後の実務において、民事裁判で支払義務が確定した子の養育費を支払わない債務者の財産の差押えがしやすくなることが期待されます。

なお、本改正法の施行は、一部を除き公布から1年以内となっています。