再転相続における相続放棄 最高裁が初判断

再転相続における相続放棄 最高裁が初判断

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熟慮期間の起点は再転相続人の認知から3か月以内

先月7月1日に改正相続法が原則施行になるなど、いま「相続」への関心が高まっています。
こうした中、最高裁は8月9日、再転相続人の熟慮期間についての初判断を示しました。

父親が伯父の債務の相続人となったことを知らないまま死亡してから約3年後、その債務を2次相続した子(再転相続人)が相続放棄できるかについて争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は、債務の相続人になったと知ってから3か月以内であれば、相続放棄できるとの初判断を示しました(裁判官4人全員一致の意見)。

民法は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内の熟慮期間に、相続放棄をするか決めなければならないとしており、通説によれば、このケースの場合も父親が死亡したときを熟慮期間の起算点とする法解釈が有力とされていました。

しかし、菅野裁判長は、親族の債務を相続していたことを知らないまま熟慮期間が始まるのは、相続財産を引き受けるのか、放棄するかを選ぶ機会を保障する民法の趣旨に反すると指摘した上で、相続放棄は有効との判断を示しました。

判決文によると、原告の女性は2015年11月、不動産競売の強制執行の通知文書を受け取り、父親が伯父の多額の債務の相続人となったことを知ったといいます。債務を抱えた伯父は2012年6月に死亡、同年9月に伯父の子らが相続放棄をしたため、父親が相続人となっていましたが、同年10月に、その父親も相続放棄をしないまま熟慮期間中に死亡したため、原告の女性が再転相続人となっていました。

女性は債務を把握してから3か月以内の2016年2月、相続放棄を申し立て、強制執行しないよう求めて提訴。債権回収会社側は、熟慮期間を過ぎた相続放棄は無効と主張しましたが、1審、2審はいずれも相続放棄を有効と認めて原告の女性が勝訴、これを不服とする債権回収会社側が上告していました。

判決の詳細については、裁判所HPをご覧ください。

近時、親族関係が希薄化する中、知らないうちに疎遠な親族の債務を相続していたというケースも少なくないとみられます。今回の最高裁の判断は、こうした実態に沿ったもので、再転相続人の相続放棄が認められる余地が広がる可能性があると同時に、相続財産の処理や債権回収の実務には一定の影響も与えそうです。