最高裁が交通事故被害者に対して、より手厚い保護を認める

最高裁が交通事故被害者に対して、より手厚い保護を認める

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平成30年9月27日最高裁判決 実務上の影響

労災給付を受けた交通事故被害者が自賠責保険金を請求した場合、自賠責保険金は被害者が優先して受け取ることができるのでしょうか、または被害者の請求額と労災保険(政府)の請求額を按分することになるのでしょうか。

これまで保険会社は、後者の按分する運用をしてきました。

ところが、最高裁は、被害者が優先して受け取ることができる、との初判断を9月27日に示しました。

判決の詳細につきましては、下記をご覧ください。
裁判所HP

本判決が与える実務上の影響点について、長瀨佑志弁護士にお聞きしました。
 
「最高裁判断によれば、労災を利用して治療費等の支払い対応をしてきた被害者が、加害者加入の自賠責保険会社に請求する場合には、従前よりも手厚い補償を受けることができることになります。

事案の詳細が不明ではありますが、加害者が任意保険に加入しているのであれば、被害者としては自賠責保険金を請求する必要はなく、加害者加入の任意保険会社に請求すれば足りることになります。

したがって、今回の最高裁判決は、①加害者側が任意保険に加入しておらず、かつ②被害者側が労災保険を利用しており、③労災保険で填補されていない損害分を自賠責保険金から回収しようとした場合(被害者請求をした場合)、に意義があると整理できるかと思います。かなり限定された場面になるかと思いますので、実務に大きな影響を与えるとまでは評価し難いかもしれません。

もちろん、最高裁が被害者に対してより手厚い保護を認める方向で判断したという点の意義は大きいといえます」

また、本判決では、被害者が自賠責保険金の直接請求権を直接行使した場合の遅延損害金の起算点について、判決の確定の日からとするのではなく、それよりも前になるという判断基準を示しています。この点についての長瀨弁護士のご見解は、以下の通りです。

「最高裁判断によれば、訴訟によって自賠責保険金を請求する場合、従来は遅延損害金の起算点を「判決確定時」よりも遡って請求することが可能になると言えます。自賠責保険金を請求する際の遅延損害金の起算点を設定する際の参考となる裁判例であり、この点は実務上も影響があるところといえるかと思います」

先生方の今後の実務の参考になれば幸いです。