個人から組織へ「事務所の体質を強くしたい!」

税理士法人大嶋会計  代表社員 税理士
大嶋良弘 先生
千葉県千葉市中央区新宿1-1-3

2012年10月1日に大嶋会計事務所から税理士法人大嶋会計へ、法人に変更されました。“個人”から“組織”へ。そこには組織に対する深い思いがありました。

税理士法人を設立された経緯を教えてください。

大嶋先生

今までは、税理士を目指して事務所に入ってきた人たちが、その後、税理士の資格を取ると独立していってしまいました。このままでは事務所自体が強くならない、と7年くらい前から感じ始めました。「事務所の体質を強くしていかなくてはだめだ!」と思ったのがきっかけです。

また税理士は、業務上、入口から出口まですべて一人で完成させるという性格がありますが、これからはそのやり方では難しいとも感じていました。以前からチームを組んで業務を進めてきたのですが、4年前くらいに、私が指名した4人による「事業承継会議」というものを立ち上げ、税理士法人化に向け具体的に動き始めました。

平成元年に父親から事務所を承継した時から考えていることは、とにかく「千葉県で一番早く信頼の高い情報を発信できる会計事務所でありたい」ということでした。そして、永続的に事務所を発展させていかなければならないということです。

税理士法人化へ向け、事業承継会議はどのように進めてこられたのですか。

大嶋先生

私が指名した4人にコンサルタントを入れた5人で進めてきましたが、最初は、「なぜ私たちがやらなければならないの?」という思いがあったようです。実は、私はこの4年間、事業承継会議に一度も首を突っ込んだことはありません。

私が直接入って口出しすれば、せっかくの「税理士法人」という新しい組織も、結局全部私の色になってしまいます。また、自分たちの責任の問題、報酬の問題、私の今後など、私に直接聞きづらいこともあるので、コンサルタントが4人と私との間の橋渡しの役割を果たしてくれました。

4人の方にトップを譲り、先生ご自身に寂しさはないですか。

大嶋先生

ないですね。だって、今まで十分やってきましたから。トップを25年もやったら疲れますよ。

それに、もともと生涯現役でやっていこうというつもりもありませんでした。会計や税法などさまざまな制度が非常に変化している中で、それらを常にキャッチアップしていくにはそれだけの力が必要です。年齢もありますし、また、今までの物の考え方の延長線上では到底対応できません。

地域における会計事務所の役割は、法人のお客さまであれば、企業経営における社外の大事な相談相手です。そのためには幅広い知識の取得と判断が必要です。「税法にこう書いてあるから」では何の解決にもなりません。

したがって、レガシィの「フリーパスポート制度」は、さまざまな情報が入ってくるので勉強になります。事務所では、月1回の勉強会で研修用教材として活用しています。

特に“組織”というものを強く意識され始めたのはいつごろからですか。

大嶋先生

組織の大事さを思ったのはここ5、6年です。法人という仕組になっていると、知識や知恵が組織に蓄えられますが、個人事務所だと、自分が廃業した時にバラバラになってしまいます。税理士法人という形をとっていれば、構成員が変わったとしても法人にノウハウが蓄積されていきます。

また、法人として一生懸命やっていけば、お客さまに対してのメッセージも強く出てきます。仕事をしていても楽しいですし、自分達の生活設計も立てやすくなります。これが個人事務所であれば、私がいなくなったら残された人たちは生活設計をどうするのでしょうか。そして、後継者がいなければ、顧客とともに他の事務所に移って

いくことになります。それでは、25年かけてせっかく築いてきた信頼がバラバラになってしまいます。

先生がお手伝いされてきた中で、特に印象深い出来事を教えてください。

大嶋先生

一つは、一緒に考え、頑張ってきた社長さまが若くしてがんで亡くなられた時、当時、私が提案して社長さまと一緒に作った仕組が十分な利益を上げて、遺されたご家族、従業員の安定収入になっていることです。

もう一つは、RCCに債権を売却され、金融機関から融資を止められ非常に苦しんだ会社の出来事です。以後は「中小企業再生支援協議会」のサポートを受けながら一緒に頑張り、それから5年ほどの現在、対前年比10%くらいで毎年伸びており、まだまだ資金的には苦しいですが常に利益を上げています。社長さまは、家の財産の大部分を仕事に投入したこともあり、一時は家族から孤立してしまった時期もあったようです。しかし、事業が展開し始めた今では、お子さんと一緒に頑張っています。その姿を拝見しているとうれしく思います。