事業承継で1件も欠けることのなかった顧問契約その理由は「あたり前のことをあたり前に」すること

渡辺会計事務所  所長 税理士
渡辺光太郎 先生
東京都港区赤坂5-5-9 赤坂スバルビル2F

先代のお父さまから事務所を承継された渡辺先生。自ら事業承継をされたことで、顧問先の事業承継のお手伝いへさらに注力されるようになったそうです。地道な積み重ねこそが、会計事務所の信頼感を高める、とおっしゃいます。

お父さまから事務所の事業承継をされ約10年。現在、事務所として力を入れていらっしゃることをお聞かせください。

渡辺先生

従来から、事業承継及び相続には取り組んできましたが、自分自身が事務所の事業承継を体験してから、よりそこに力が入るようになりました。

後継者の育成から財産の承継まで、いわゆる「人」と「財産」の承継のお手伝いをしています。その中で常々思うのは、一般的な「テクニック」の部分以外が大事だということです。

「事業承継」というと、つい事業計画や税務的なテクニックに目が行きがちですし、実際アドバイスすることが多いかと思います。

しかし、その前に大切なことは、会社を引き継いでいく時に「変わるものと変わらないもの」があることをはっきりと認識することだと思います。

ご経験の中から、事業承継でうまくいくコツを一つ教えてください。

渡辺先生

親子といえども考え方は異なりますから、私も最初は反発していました。

しかし、ある勉強会に参加した時に、本筋、「変わらないもの」は引き継いでいかなければならないことを学びました。

そのことを理解するには、まず親を認め、感謝することだと思っています。まずは、「生んでくれてありがとう」と自分の存在があることを親に感謝することではないでしょうか。

実は、父親と私の年表を作成しています。

他でも、事業承継の説明をする際には、この年表を使ってお話をしています。

この年表を作成するには、親からいろいろと聞かなければなりません。その過程では、考え方や大事にしていること、さまざまな苦労などを知ることになります。そうした中で、必然的に感謝する気持ちもわいてくると思います。

一番思い出深かったことはなんでしょうか?

渡辺先生

事業承継で顧問先が1件も欠けることなく契約を継続いただけたことが一番嬉しかったですね。

やはり、自分が事務所を引き継いだことで、これまでの顧問先が減ってしまうことが一番怖かったです。契約を解除されるということは、私自身を認めてもらえなかったことになるわけですから、すべてのお客さまに契約を継続していただけたことは、とても嬉しかったです。

その全社継続の要因として、何か意識してきたことはありましたか?

渡辺先生

顧問先の社長は人を見抜く目がありますし、われわれのことをよく見ています。顧問先に経営のアドバイスを行うのに、自事務所がきちんとしていなければ説得力がなく、相談やアドバイスを受けたいとも思いません。

当たり前のことを当たり前にやってきたことを評価していただけたのではないでしょうか。

朝はきちんと出社する、挨拶をするなど、地味なことの積み重ねですが、このような基本がまずあり、その後に会計や税法等のテクニックがあると思います。

当事務所は朝を大切にしています。8時20分に掃除を行い、その後、朝礼を行ってから仕事を始めます。朝9時に100%の力を発揮するためには、その前のウォーミングアップが大切です。朝礼では、昨日行ったことと今日の予定を確認します。そのためには、朝礼の前に両方を確認しておく必要があります。

朝礼の前に今日の準備ができていると、効率よく業務に望めます。どんなに前日の帰宅が遅くなっても、翌日の朝はきちんと事務所に来て皆を迎え、朝礼を行って外出する。

当たり前のことですが、日中はほとんど事務所にいなくても、朝のスタートをきちんとやっていれば、あとはうまく回っていくような気がします。

お客さまとの信頼関係は、一気に何とかできるものではありません。当たり前のことを当たり前に積み重ねてきたことを評価していただけたのだと思います。