弁護士を陥れる 非弁提携の実態

服部啓法律事務所  弁護士
深澤 諭史 先生
東京都港区西新橋2-18-1 弁護士ビル2 号館701 号室

第二東京弁護士会の非弁護士取締委員会の委員として、非弁問題に精力的に取り組まれ、関連書籍も多く出されている深澤先生に、非弁問題の最近の動向や勧誘の実態について、お話を伺いました。

非弁問題に取り組み始めたきっかけを教えてください。

深澤先生

弁護士1年目に第二東京弁護士会の非弁護士取締委員会に入ったのがきっかけです。

非弁護士取締委員会は、どういう委員会ですか。

深澤先生

非弁問題を扱う委員会で、非弁護士(業者)による非弁行為や会員弁護士の非弁提携行為の取締りを目的としています。

非弁問題について、詳しく教えてください。

深澤先生

非弁問題は2つに大別されます。1つは弁護士でなければ取り扱うことができない法律事務を非弁業者が取り扱う「非弁行為」の問題です。もう1つは、非弁業者が弁護士に対して名義貸しや違法な仕事のあっせんを持ち掛けたりする「非弁提携」の問題です。近年は、弁護士の増加と相まって後者が増えてきています。

非弁提携について、もう少し詳しく教えてください。

深澤先生

非弁提携とは、弁護士が、非弁業者と、弁護士法や弁護士職務基本規程で許されていない提携をすることをいいます。非弁行為を行う者から事件の周旋を受けたり、あるいは非弁業者に対して名義を貸す行為があります。これらは、弁護士法27条や弁護士職務基本規程の11条から13条に違反する行為です。ここで注意したいのは、いずれも名目ではなく、実質的に判断されるということです。

非弁提携の勧誘の実態はどうなっていますか。

深澤先生

昔は、半ば引退状態の高齢の弁護士を勧誘するケースが多かったようですが、最近の非弁提携は、独立して間がなく仕事に困っていたり、仕事を取れる見込みのないような弁護士が狙われることがほとんどです。例えば、弁護士名簿から登録1、2年目の新人や若手しかいない事務所をピックアップして、NPO法人や広告業者を名乗って非弁提携を持ち掛けてきます。特に最近の非弁提携は、一般市民だけでなく、提携弁護士さえも陥れようとしている点が大きな特徴と言えます。弁護士側としては、非弁業者の甘言に安易に乗せられることなく、当然のことながら自ら調査し、考え、また周囲の弁護士や弁護士会に相談することが、非弁提携の回避に向けて、とても重要になってきます。

こうした状況の中、先生はどういった取組みをされていますか。

深澤先生

非弁委員会以外の活動では、弁護士向けに専門書を書いたりセミナーを開催しています。また一方で、弁護士向けに事業をしている会社からの相談やコンサルティングをしたり、こうした複数の会社の顧問を引き受けたりしています。

非弁問題に関連して、隣接士業との業際問題がよく話題になります。最後に、この点について伺えますか。

深澤先生

業際問題は、士業間の縄張り争いだと言われることがありますが、重要なのはこうした争いが起こるとクライアントに迷惑をかけることになりかねないということです。司法書士には本人訴訟支援業務として、裁判所に提出する書面の作成がありますが、この業務範囲がよく問題になります。裁判所や日弁連は、司法書士の業務は本人の言い分を法的に整理するのみで、これを超える行為は非弁に当たるとする見解を示しています。また税理士は、経営者から相続や事業承継に関する相談を受けることが多いと思いますが、税務を超えて法的アドバイスにまで踏み込んでしまうと非弁行為に抵触する可能性が出てきますので、この種の相談については、弁護士ともよく相談するこ とが望ましいと思います。